制度実務ガイド #05 家賃と収入基準

公営住宅の家賃と収入条件の仕組み 完全解説

公営住宅の家賃は固定額ではなく「世帯所得と物件条件」で決まる応能応益家賃制度が適用されます。
政令月収(月額所得)の法定計算手順、控除一覧、一般世帯(15.8万円)と裁量世帯(21.4万円)の判定、公社・URとの違いを法令根拠に基づき解説します。

📅 最終更新日: 2026-10-02⚖️ 根拠法令: 公営住宅法第16条・第23条、公営住宅法施行令第1条・第2条🌐 English Guide: Rent & Income Guide (EN)

1. 公営住宅の「応能応益家賃制度」とは(毎月の算定式)

公営住宅(都営・県営・市営)の家賃は、民間賃貸住宅のような「部屋ごとの固定家賃」ではありません。 1996年(平成8年)の公営住宅法改正により導入された「応能応益家賃制度(公営住宅法第16条)」に基づき、入居者の支払能力(応能)と住宅の規模・立地・経過年数(応益)を掛け合わせて毎年度個別に算出されます。

毎月の家賃算定式(公営住宅法施行令第2条)

毎月の家賃 = 家賃算定基礎額 × 市町村立地係数 × 規模係数 × 経過年数係数 × 利便性係数

  • 家賃算定基礎額(応能): 世帯の「政令月収」がどの所得階層(分位)に入るかで国政令で定められた全国一律の基準額(下表参照)。
  • 市町村立地係数(応益): 地域ごとの地価水準を反映(三大都市圏や政令市は高め、地方都市は低め)。
  • 規模係数(応益): 住宅の専用床面積を基準面積(65㎡)で除した数値(床面積が広いほど高くなる)。
  • 経過年数係数(応益): 建築後の年数経過に応じた減額係数(築年数が古いほど安くなる)。
  • 利便性係数(応益): 最寄り駅からの距離、エレベーターの有無、周辺環境等に基づき自治体条例で定める係数(0.5〜1.3程度)。

所得階層区分(分位)と家賃算定基礎額(公営住宅法施行令第2条第2項)

階層(分位)世帯の政令月収額家賃算定基礎額(月額)実質家賃の目安(築年・立地による乗算後)
第1分位0円 〜 104,000円以下34,400円約 15,000円 〜 25,000円前後
第2分位104,001円 〜 123,000円以下39,700円約 20,000円 〜 32,000円前後
第3分位123,001円 〜 139,000円以下45,400円約 25,000円 〜 38,000円前後
第4分位139,001円 〜 158,000円以下51,200円約 30,000円 〜 45,000円前後
第5分位(裁量)158,001円 〜 186,000円以下58,500円高齢者・障害者・子育て世帯等の特例枠
第6分位(裁量)186,001円 〜 214,000円以下67,500円高齢者・障害者・子育て世帯等の特例枠

2. 入居資格となる収入基準(一般15.8万円 / 裁量21.4万円)

公営住宅法第23条第1号ロに基づき、申込みできる世帯の収入には全国統一の上限が定められています。

🏠 一般世帯: 政令月収 158,000円以下

標準的な世帯に適用される所得基準です(第1〜第4分位)。

  • 年間総所得から法定控除を差し引いた後の金額を12ヶ月で割った額が「158,000円」を超えていると、公営住宅には申込みできません。
  • 給与収入(年収・額面)の目安:
    • 単身者: 年収約 296万円以下
    • 2人世帯(扶養1人): 年収約 350万円以下
    • 3人世帯(扶養2人): 年収約 398万円以下
    • 4人世帯(扶養3人): 年収約 447万円以下

🌟 裁量世帯: 政令月収 214,000円以下

特に居住の安定を図る必要がある世帯に対する特例緩和枠です(公営住宅法施行令第6条)。

  • 高齢者世帯: 申込者が60歳以上であり、同居者全員が60歳以上または18歳未満の世帯。
  • 障害者世帯: 申込者または同居親族に身体障害(1〜4級)、精神障害(1〜2級)、知的障害(療育手帳程度)がある世帯。
  • 子育て世帯: 同居者に小学校就学前(0歳〜満6歳に達する日以後の最初の3月31日まで)の子がいる世帯(※自治体によっては「高校生以下」まで独自に緩和している場合あり)。
  • 給与収入目安(3人世帯・扶養2人の場合): 年収約 497万円以下まで申込み可能。

3. 政令月収(月額所得金額)の具体的な計算ステップ

政令月収とは、単なる「給与の月額額面」や「手取り」ではありません。公営住宅法施行令第1条第3項に定められた法定計算式に従って算出します。

政令月収 = ( 世帯全員の年間総所得金額合計 - 法定控除額合計 ) ÷ 12ヶ月

※100円未満の端数は切り捨て

ステップ1: 世帯全員の「総所得金額」を求める

給与所得者の場合、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」(=所得金額)を確認します。手取りではなく、額面収入から税法上の給与所得控除が引かれた後の金額です。
世帯内に働く方が2人以上いる場合、それぞれの総所得金額を合算します。

ステップ2: 公営住宅法の「法定控除額」を差し引く

合算した総所得金額から、世帯構成に応じて後述の「扶養親族控除(1人につき38万円)」や「特別控除(障害者控除・ひとり親控除等)」を差し引きます。

ステップ3: 12ヶ月で割り、100円未満を切り捨てる

控除後の残額を12で割った金額が「政令月収」です。この額が158,000円(裁量世帯は214,000円)以内であれば入居資格を満たし、その数値に対応する「分位(第1〜第6分位)」で毎月の家賃が決まります。

4. 法定控除額一覧(扶養控除・ひとり親・障害者等)

公営住宅法施行令第1条第3項に基づき、政令月収の計算で差し引くことができる法定控除の一覧です。

控除の項目控除額適用条件・根拠
給与所得控除・公的年金等控除1人につき 最大100,000円給与所得または公的年金等所得がある方1人ごとに所得金額から控除(税制改正に伴う調整措置)。
同居・扶養親族控除1人につき 380,000円申込者を除く同居親族、および別居の扶養親族1人につき控除(配偶者、子供、親など)。
特定扶養親族控除1人につき 250,000円 加算
(扶養控除と合わせて計63万円)
扶養親族のうち、16歳以上23歳未満の方(高校生・大学生年代の子など)。
老人扶養親族控除1人につき 100,000円 加算
(扶養控除と合わせて計48万円)
扶養親族のうち、70歳以上の方(70歳以上の父母・祖父母など)。
障害者控除(普通障害)1人につき 270,000円本人または同居親族が身体障害手帳3〜6級、療育手帳(軽度〜中度)、精神障害者保健福祉手帳2〜3級等。
特別障害者控除1人につき 400,000円本人または同居親族が身体障害1〜2級、療育手帳(最重度・重度)、精神障害1級等。
ひとり親控除350,000円生計を一にする子(総所得48万円以下)を有する未婚または配偶者と死別・離別した世帯主(本人の合計所得500万円以下)。
寡婦控除270,000円夫と死別・離別後に再婚していない女性(本人の合計所得500万円以下)。

5. 所得に含めない収入(非課税所得・生活保護・失業給付)

公営住宅法上、以下の金銭は生活の資質を支える給付とみなされ、所得金額の計算には一切含めず「0円」として扱われます。

✅ 所得に含めない収入(合算不要)

  • 生活保護の各種扶助料: 生活扶助、住宅扶助、教育扶助など。
  • 雇用保険の給付金: 基本手当(失業保険)、育児休業給付金、介護休業給付金など。
  • 遺族年金・障害年金: 国民年金・厚生年金の遺族給付・障害給付(非課税年金)。
  • 児童手当・児童扶養手当: 国・自治体から支給される子ども手当類。
  • 親族からの仕送り金: 留学生や扶養親族への生活費送金。
  • 奨学金: 日本学生支援機構等の給付型・貸与型奨学金。

⚠️ 必ず合算する収入(合算必須)

  • 給与収入: 正社員、派遣、契約、パート、アルバイトの給与・賞与・手当(通勤非課税手当を除く)。
  • 老齢年金・退職年金: 老齢基礎年金、老齢厚生年金、企業年金など(課税対象年金)。
  • 事業所得・不動産所得: 自営業、個人事業主、フリーランスの営業所得。

6. 入居後に収入が上がった場合(収入超過者・高額所得者の明渡し規定)

公営住宅に入居した後、就職・昇給・世帯員の就労により政令月収が基準を超えた場合、公営住宅法第28条および第29条に基づく厳しい明渡し規定が適用されます。

1. 収入超過者(公営住宅法第28条)

  • 条件: 公営住宅に3年以上入居し、毎年の収入申告で政令月収が基準(一般15.8万円 / 裁量21.4万円)を超えた場合。
  • 措置:・住宅の「明渡し努力義務」が課されます。
    ・本来の公営住宅家賃に加えて「割増家賃」が加算され、収入に応じて家賃が引き上げられます。

2. 高額所得者(公営住宅法第29条)

  • 条件: 公営住宅に5年以上入居し、直近2年連続で政令月収が313,000円(一般給与年収で約800万円前後相当)を超えた場合。
  • 措置:・公営住宅の事業主体(都知事・県知事・市長)から「住宅の明渡し請求」(期限指定)を受けます。
    ・近隣の民間賃貸住宅と同等の家賃(近傍同種家賃)が全額請求されます。
    ・指定期日までに退去しない場合、不法占拠として明渡し訴訟や損害賠償金の請求が行われます。

7. 公営住宅 vs. 住宅供給公社 vs. UR賃貸の家賃・収入基準比較

収入の上限で公営住宅に申し込めない世帯や、逆に安定収入がありスムーズに契約したい世帯は、公社一般賃貸やUR賃貸が適切な選択肢となります。

比較項目公営住宅(都営・県営・市営)住宅供給公社(一般賃貸)UR賃貸住宅
家賃の決定方式応能応益家賃(収入連動)
世帯所得と物件年数で毎年個別算定
固定家賃(市場連動)
周辺相場に基づき設定
固定家賃(市場連動)
周辺相場に基づき設定
所得「上限」基準厳格にあり
政令月収158,000円(裁量214,000円)以下
なし(いくら高くても可)なし(いくら高くても可)
所得「下限」基準なし(生活保護・無収入でも申込可)あり(基準月収)
家賃の約3〜4倍または月収20万〜25万円以上
あり(基準月収)
家賃の約4倍または月収25万〜40万円以上
預貯金での審査代行原則不可(年間所得で判定)可能(基準貯蓄額)
家賃の100倍以上の預貯金残高
可能(基準貯蓄額)
家賃の100倍以上の預貯金残高
入居後の収入増加家賃値上げ・明渡し請求あり制限なし(退去の必要なし)制限なし(退去の必要なし)

8. 根拠法令・公式出典情報(D-04対応)

根拠法令および公的出典一覧

※公営住宅の家賃算定式に含まれる「市町村立地係数」「利便性係数」は各自治体の条例で個別に定められており、同一間取りであっても立地や築年数によって月額家賃が異なります。各住宅の想定家賃目安は当サイトの物件詳細ページおよび自治体の最新募集案内書をご確認ください。

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